歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしり・食いしばりは、口の中で歯を強くこすり合わせたり、上下の歯をギューッと強い力で噛みこんでしまう習慣のことを言います。
歯ぎしり・食いしばりは多くの人が日常的にの行っているもので、一時的に行われるものであれば特に問題はございません。
ですが、長期間にわたって続く場合には歯や顎に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらの癖は無意識のうちに行っていることがほとんどのため、本人が気づかないことも多くあり、知らず知らずのうちに歯へのダメージが蓄積されてしまいますので注意が必要です。
歯ぎしり・食いしばりの3つのタイプ
歯ぎしりや食いしばりは、そのパターンによって主に3つに分類されます。
以下では、その主要なタイプである「グラインディング(歯ぎしり)」、「クレンチング(食いしばり)」、「タッピング」について詳しく説明します。
グラインディング(歯ぎしり)
一般的に「歯ぎしり」と呼ばれるもので、歯を強く擦り合わせる行為です。
一般的には睡眠中に発生し、本人が気づかないことが多いです
しかしながら、周りに人に聞こえるほど大きな音を出すケースもあるため、ご家族など、一緒に寝ている周りの人に迷惑をかけてしまう可能性もあります。
グラインディング(歯ぎしり)の特徴
ギシギシギリギリといった歯ぎしりの音が聞こえる
歯の摩耗が激しく、歯の表面が平らになる場合もある
顎の筋肉が緊張し、顎関節痛や頭痛が生じやすい
クレンチング(食いしばり)
クレンチングは、一般的には「食いしばり」や「咬みしめ」と表現されるタイプで、歯を強く噛みしめる行為です。
通常は意識的に行われる行為ですが、クレンチングの癖のある方は無意識的に行っていることも多く、夜間に限らず日中にも発生することがあります。
クレンチング(食いしばり)の特徴
噛む力が非常に強いため、歯が割れやすい
睡眠中のみならず、日中にも起こることがある
頬の筋肉が固く膨らんで、エラの張ったような顔になる
お口の中に骨隆起と呼ばれるコブのようなものが生じることもある
タッピング
歯を軽く叩くように、カチカチと動かす行為です。
グラインディングやクレンチングとは異なり、比較的軽度な症状ですが、歯や口腔に影響を及ぼすことがあります。
寝ているときも、起きている時も起こりますが、カチカチと音が鳴りますので、自覚しやすいタイプと言えるます。
タッピングの特徴
歯に対する影響度は比較的低い
比較的、癖を自覚しやすい
歯ぎしり・食いしばりの症状
つめ物が取れやすい
歯ぎしりや食いしばりによる強い圧力や摩擦は、歯とつめ物を接着しているセメントを少しずつ破壊し、つめ物を外れやすくしてしまう可能性があります。
つめ物が取れる原因は、他にも、接着が不十分だったり、歯とつめ物の間にむし歯ができてしまったりすることも考えられますが、取れたつめ物の下がむし歯にもなっておらず、かつ、何度詰め直しても頻繁につめ物が外れてしまうような場合は、歯ぎしりが原因である場合が多いです。
つめ物がキレイに外れた場合はそれを再び取り付けることができますが、つめ物の調整のために歯を削る必要があることもあるため、歯には一定のダメージが生じます。
さらに、頻繁につめ物が取れる状態は歯科医院に何度も通う必要があり、時間的にも費用的にも負担が大きくなってしまいます。
知覚過敏を起こす
歯ぎしりによる問題の一つとして、歯の根元が削れ、知覚過敏を起こしてしまうことが挙げられます。
歯ぎしりによる強い圧力、歯と歯茎の境目に集中してかかるため、歯の根元がくさび型に欠けてしまいます(くさび型欠損)。
歯のエナメル質が破壊され、歯の内側の象牙質が露出してしまうため、歯が冷たい、熱い、甘いなどの刺激に過敏に反応し、鋭い痛みを感じる知覚過敏の症状がでる可能性が高まります。
また、歯が削れた部分はむし歯にもなりやすくなりく、神経や歯髄にダメージを与える可能性もあります。
放置していると、神経が死んでしまうこともありますので早めの根本解決が必要です。
対処法として、プラスチックで欠けた部分を埋める方法がありますが、歯ぎしりの圧力が強い場合、またすぐに外れてしまうため、きわめて短期的な対策にしかなりません。
そのため、歯ぎしりの問題を根本的に解決するための治療が必要となります。
歯を支えている骨が溶け、歯周病になりやすくなる
歯ぎしりや食いしばりによって歯に加わる圧力と摩擦は、歯周組織にも悪影響を及ぼすことがあります。
過度な力により歯が揺さぶられると、歯ぐきが炎症を起こし、歯周病のリスクが増加します。
さらに歯周病菌が存在する場合、歯ぎしりによって歯ぎしりの影響が加わると、歯周病が悪化しやすくなってしまいます。
歯周病の治療を受けていても、歯ぎしりによって歯槽骨が損傷している場合、歯周病の治療が難しいことがあります。そのため、歯ぎしりの傾向がある人は、歯周病治療と同時に夜間のマウスピースを使用することが必要です。
マウスピースは歯ぎしりを抑え、歯と歯槽骨にかかる負担を軽減する役割を果たします。
歯周病の予防と治療においても、歯ぎしりに対する適切な対策は非常に重要です。
神経をとった歯の根の先が炎症を起こす(歯根膜炎)
歯根膜炎とは、歯の根の周りある歯周組織を構成している膜(歯根膜)が炎症を起こしている状態を指します。
歯ぎしりや食いしばりによる圧力が強い場合、歯根膜に負担がかかり、歯根膜炎が起こり、歯茎が腫れたり、歯が浮いたように感じたり、噛んだ時に痛みを覚えるようになります。
歯根膜炎は、歯の根が割れてしまう等といったトラブルが起こる前の兆候とも言える症状ですので、これらの症状が現れた場合、早めに歯科医に相談することが大切です。
歯が割れてしまう
歯ぎしりや食いしばりによる長期間の圧力と摩擦は、歯に割れやヒビが生じる原因となります。
特に、神経をとってしまった歯の場合、歯ぎしりの強い力に耐え切れずに歯の根っこの部分まで割れてしまうことがあります。
歯が割れると、噛むたびに痛みを感じたり、歯ぐきが腫れたり、上の奥歯の場合は頭痛を引き起こすことがあり、日常生活に支障をきたす可能性が高まります。
ほとんどの場合、歯が割れてしまったら抜歯が必要になってしまいますので、そうなる前の対策が重要になります。
当院での治療法
ナイトガード(マウスピース)の作製
歯ぎしりや食いしばりによる歯への強い力から保護するために、ナイトガードと呼ばれるマウスピースを使用することがお勧めされます。
睡眠中、マウスピースを使用していただくことで、歯ぎしりや食いしばりなどの圧力や摩擦から歯を保護することができます。
ナイトガードは歯科医院で作成することができ、保険適用の範囲内で費用がかかります。
通常、3割負担の場合でも、約3,000円程度で作成できます。
行動認知療法
歯ぎしりや食いしばりなどの無意識的な癖を治療するためには、行動認知療法が有効です。
多くの場合、無意識化で行われる癖を治すのはそう簡単にできることではありません。 なぜなら、食いしばりをしないように気を付けようと思っても、そもそもご自身がその癖を行っている事に気が付いていないからです。
この治療法では、まず自分自身が癖を行っていることに気付くことから始まります。例えば、ポストイットやシールを目に付く場所に貼り、歯ぎしりや食いしばりを意識的に止めるようトレーニングします。
平常時に上下の歯を接触させないよう意識していただくことで、食いしばりに付随する歯のトラブルも、だんだんとおさまってくるようになります。
お顔の筋肉のマッサージ
歯ぎしりや食いしばりの習慣がある方は、口周りの筋肉が非常に緊張していることがあります。
この筋肉の緊張が、頭痛や肩こりなどの症状を引き起こすこともありますので、その筋肉の緊張を緩和し、リラックスさせるために、お顔の筋肉のマッサージを行うことも有効です。
マッサージは歯科医院で行うこともできますが、自宅でも簡単に実施できます。
効果的なマッサージ法をアドバイスいたしますので、お風呂やすきま時間を利用して実践してみてください。
筋肉の緊張が和らぐことで、歯ぎしりや食いしばりによる不快な症状も軽減することが出来ます。